本づくりにかかる費用と契約【広報・PRのための、シンプルな本と企画のつくり方】第12回

出版に関する費用と権利の基礎知識

広報・PRのための、シンプルな本と企画のつくり方

この連載では、good.book(グーテンブック)という出版サービスでこれまで100冊ほどの書籍企画・編集・発行を手掛けてきた著者が、お手伝いさせていただいた企画やプロジェクトの経験から「シンプルな本づくりのポイント」を解説します。本づくりだけをしてきた著者ではないからこそ言える、「単なる本づくりではなく、事業や活動を広げる目的をベースにした出版プロジェクト」についてお伝えします。

 

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本づくりで費用がかかる項目とは

今回は本づくりに必要な費用についてご紹介します。もちろん、企画内容や作り方、出版社によって費用は変わりますので、ここでは具体的な金額は出しませんが、何をすると費用が抑えられるか、何によって費用がかさみやすいかをご説明します。
出版に関する費用は、大きく「ソフト」「ハード」「販促・宣伝」の3つに分けられます。ソフトとは本の中身(原稿やデザイン)を作ること、ハードとは本をモノとして印刷・製本すること、販促・宣伝は作った本を多くの方に届けるために必要な活動です。
ここではソフト面・ハード面において必要な費用について簡単に説明します。

 

ソフト(本の中身)を作るために必要な費用

編集者やライター、デザイナー、その他本づくりに関わる人の人件費は、本の中身を作るために必要な費用です。これはどこまでの作業を著者自身が行い、何を外部(プロ)に依頼するか、で変わってきます。
著者が原稿を執筆する場合、原稿料は発生しませんが、執筆をライターに依頼する場合、文章量にもよりますが200ページ程度の一般的な書籍であれば、やはりライティング料として数十万円はかかります。また、取材や校正について、コンテンツのクオリティをさらに上げたい場合に回数を増やして対応することがありますが、取材回数や校正の回数によって、かかる原価が変わります。
また、書籍では表紙の作成費用が必ず発生しますが、本の中に掲載する図版の制作をデザイナーに発注する場合は、それらの制作点数も費用に影響します。さらに、制作のために写真撮影が必要な場合は、カメラマンの撮影費も必要となります。

著者が制作費用を負担するパターンで進める場合でも、すべての制作費を出版社が負担して進める場合でも、かかる費用と収益のバランスを見る必要があります。制作を開始する前に、費用見積や作業分担を含めた契約条件を、出版社としっかりお話しされるのがよいと思います。

 

ハード(モノとしての本)を作るために必要な費用

印刷・製本にかかるコスト=ハードの費用は、ページ数や印刷部数、どういう印刷・製本方法を選択するかによって変わります。印刷方式には様々な種類がありますが、ここでは弊社でも主に利用している「オンデマンド印刷」と「オフセット印刷」をご紹介します。

 

■オンデマンド印刷
必要なときに必要な部数の印刷を行う、高速デジタル印刷機による印刷方式です。少部数の印刷・製本に適しています。インクではなくトナーを使った印刷(トナー方式)が主流なので、次に説明するオフセット印刷のようにインクが乾くのを待つ必要がなく比較的短期間での作業が可能です。100部くらいからの小ロット印刷が可能ですが、もっと大量に印刷する場合は、単価(1冊あたりの印刷・製本代)が下がりづらいというデメリットもあります。

 

■オフセット印刷
印刷用の版を作り(製版して)、インクを紙に転写する印刷方式です。ある程度の部数をまとめて印刷するのに向いています。版を印刷機に取り付けて印刷するため、版の作成費用(製版費用)がかかりますが、部数が多ければ多いほど1冊あたりの単価が安価になります。ただし、小部数だと単価はかなり高額になってしまいます。
印刷後、インクを乾燥させるという工程なども必要なため、印刷データができてから印刷物として完成させるまでに、オンデマンド印刷よりも長く時間がかかる傾向にあります。

 

弊社では、少部数の場合はオンデマンド印刷を、1000部を超える場合はオフセット印刷を選択することが多いですが、600~800部あたりだと、どちらで印刷してもあまり単価が変わらずコストパフォーマンスが悪いため、もう少し部数を増やす・減らすを含めてご相談しています。

また、連載第10回でご紹介した製本の方式によってもかかる費用が変わります。並製本書籍の印刷にかかる費用は、ページ数や仕様(色数や紙の種類)、部数によって変動しますが、弊社から著者への提供価格としては、1冊数百円程度からお届けしています。

上製本の場合は一概にはいえませんが、上製本を1冊、2冊といった単位で発注すると1冊20万円といった価格で対応されている印刷会社もあり、最初の1冊を作る費用が高額になってしまう傾向にあります(もちろん500部、1000部と部数を増やせば単価を抑えることはできます)。

出版費用は、出版サービスや出版社によって異なり、安価に出版できるサービス(著者の対応範囲が大きくなり、サポート範囲が小さなサービス)もあります。逆に費用面では高くなる出版社もあります。ご自身のやりたいこととできることから、どこのサービス・出版社と組むのがよいか、まずは問い合わせして比較していただくのがよいと思います。

 

出版費用の負担方法と「印税」の考え方

出版に関わる費用(ソフト、ハード、販促・宣伝)を誰が負担するのか、については「企画内容」や「出版スキーム」によって、次のようなパターンに分けられます。


1 出版社が全額を負担する(いわゆる商業出版)
2 著者が全額を負担する(いわゆる自費出版)
3 出版社と著者で分担する
4 他の方法で費用を調達する(クラウドファンディングでまかなう、など)

 

本を制作する最初の工程である企画づくりで、費用の負担については明確にしておく必要があります。
費用の負担方法によって、販売利益等のリターン条件が変わることもあります。たくさんリスク(コスト)を負う場合は、当然その分リターンもほしいですよね。つまり、

・著者が大きくコスト負担して、リターンも著者が大きくもらう
・出版社が大きくコスト負担して、リターンも出版社が大きくもらう

ということです。一般的なビジネスで考えると当たり前の構図ですが、本を制作する最初の段階で、どのような負担方法が企画に合っているかも考えておく必要があります。
また、企画によっては著者への印税によるリターンは不要で、その分を販売価格のディスカウントや広告出稿にあてることで、読者数を増やしたいという場合もあります。

 

弊社の出版サービスでは、著者印税として「電子書籍で15%前後、印刷書籍で10~15%程度」をお支払いすることが多いです。ただし、ページ数と販売価格の設定等によって製造原価の構成が変わるため、変動もあります。また、先ほどご説明したように、出版社と著書のどちらがどれだけリスクを負うかによっても変わります。ちなみに一般的には、紙の書籍の著者印税は「10%」であることが多いようです。
電子書籍の印税は、高い出版社はぐんと高いですし、アマゾンの電子書籍Kindleに、Kindle限定で直接流通(出版社を通さずに)させた場合、70%という高い印税を手にすることもできます。

販売収益を出版社と著者でどうシェアするかは、出版を軸にしたトータルなビジネスモデルをどう作るかによって変わってくる話です。弊社の企画の中には、販売収益から原価を差し引いたうえで、著者と(ビジネスパートナーとして)単純に折半している場合もあります。これは、販促や在庫管理にかかるコストも計上したうえで、利益を分配するという組み方です。

 

出版にあたって発生する「著作権」と「版権」

出版に関連する権利として、著作権と版権があります。
書籍の著作権は知的財産権の一つで、音楽や文章、ソフトウェアなどの著作権と同様に、基本的には100%著者が持ちます(著者と出版社で半分ずつの場合もあります)。ただし原稿だけではなく、書籍の中に使用されている図版や写真にもそれぞれ著作権があるので、注意が必要です。書籍の奥付に記載されているコピーライト表記が著作権の持ち主になります。

版権とは、出版する権利のことです。分かりやすくいうと、書籍のデータを印刷できる権利です。印刷するためにレイアウトされ組版されたデータは出版社が持っているため、著作権を持つ著者であっても自由に使うことはできません。したがって、一度A社から出版した書籍をB社から再度出版しようとする場合は、印刷データをB社で作成し直す必要があります。

 

出版時に結ばなければいけない契約書の中身

出版に関連する契約として、出版契約書があります。権利関係や出版方法、印税支払いに関することまで様々なことが記載されていますが、中でも「出版社が著者の原稿で版を作り販売することを、著者が許可する」という部分が重要です。出版契約書がないと、そもそも本を売ることができないので、出版においては欠かすことができないものです。

出版契約書では、出版に関する様々な取り決めを明文化します。基本的な項目として必ず明記されるのは、契約期間と販売場所です。販売場所は、販売できる国を指定するもので、日本国内のみで販売する契約だった場合、海外での販売はできません。
契約期間と販売場所以外にも、電子書籍の販売を許諾しているか、オーディオブックの販売を認めているか、海外翻訳版の制作・発行など二次利用を認めているか、などを出版契約書で定義しておく必要があります。版権を持っている出版社でも、出版契約書で認められていないことはできません。

多くの出版社では、出版契約書内で印税額についても定義します。紙の本が販売されたときの印税額だけではなく、電子書籍の場合、二次利用した場合など販売形態によって印税の設定が異なることが多くあります。二次利用に関するお金の話も、出版契約書で最初に定義しておくと、後々再度話し合う必要がなくなり、出版活動がスムーズに進められます。

 

今回は、本づくりにかかる費用と契約についてお伝えしました。契約内容や費用負担については、制作を始める前にある程度すり合わせておくことが必要です。企画フェイズでそのあたりの条件も含めて話したうえで、組む出版社やパートナーを検討されるのがよいかと思います。

次回は「本を広報・PRに使う方法」についてご説明します。

 

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