広報・PRとしての本づくりとはどういうことか【広報・PRのための、シンプルな本と企画のつくり方】第1回
2020-08-27
広報・PRとして本づくりを行う場合、どういう視点を持って取り組むとよいか
広報・PRのための、シンプルな本と企画のつくり方
この連載では、good.book(グーテンブック)という出版サービスでこれまで100冊ほどの書籍企画・編集・発行を手掛けてきた著者が、お手伝いさせていただいた企画やプロジェクトの経験から「シンプルな本づくりのポイント」を解説します。本づくりだけをしてきた著者ではないからこそ言える、「単なる本づくりではなく、事業や活動を広げる目的をベースにした出版プロジェクト」についてお伝えします。
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はじめに
good.book(グーテンブック)という出版サービスを運営している窪田と申します。私はこれまで、100冊ほどの書籍企画やプロジェクトに携わってきましたが、この連載では、その経験を通して得た「シンプルな本づくりのポイント」をお話しさせていただきます。
本連載は、「文章を書くことが好きなので、本を出してみたい!」という方よりも、「書籍(出版)を通して、自分が取り組んでいることやプロジェクトのことを人に伝えたい」「それを伝えることで、何らかのコミュニケーション効果を生み出したい」と考えている方の役に立つことをイメージしています。広報・PRを目的とした場合の企画設計の方法と、大まかな本づくりの進め方、それぞれのステップでのポイントをお伝えします。
私はもともと編集者ではなく、出版業界の出身でもありません。主にITを使って様々な企業のご支援をしてきました。今も出版事業と同時に、コンテンツを活用したブランディングやマーケティングのお手伝いをさせていただいています。生粋の書籍編集者の皆さまからはお叱りのお言葉をいただく内容もあるかもしれませんが、門外漢ゆえの、としてご了承ください。
一方で、本づくりだけを仕事としてこなかった会社だからこそ言える、「単なる本づくりではなく、事業や活動を広げたいといった目的をベースにした出版プロジェクト」の話ができるのではないかと思っています。
広報・PRとしての本づくりが最も効果的なテーマとは
本題に入る前に、広報・PRとして、どのように本(出版)を活用するとよいか(逆に活用しない方がよいのはどういうときか)を最初にまとめてお伝えします。
- 私が、広報・PRとしての本づくりが最も効果的だと考えているのは、大きく次の3つの場合です。
1 課題(社会的課題より、もう少し小さな課題も含む)解決の「ストーリー」を伝えたいとき
2 伝えたい相手が知りたいと望んでいるハウツー・情報について、ユニークかつ十分な「知識の提供」をしたいとき
3 「まったく新しい概念」を分かりやすく伝えたいとき
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課題解決のストーリーをじっくりと伝えられる
まず1の「課題解決の『ストーリー』を伝えたいとき」についてです。
ここで、「本」=「じっくりと対面で話をすること」であると想像してください。1冊の本を読んでもらうことを、数時間をかけて対面で話を聞いてもらうことだとイメージしてください。自分が興味を持てないテーマ、ちょっと面白いかな……、と思う程度の話を数時間も聞き続けることは苦痛ですよね。私は耐えられません。そういった場に参加してしまっても途中で退席することを考えてしまいます。
一方で、自分にとっても関心のある重要な社会課題について、何とか解決しようと取り組んでいる人の話を聞くことは非常に大切な時間となります。「どういう想いで活動しているのだろう」「自分に何か協力できることはないのか」等の考えが浮かんできて、興味を持って聞き、対話することができます。これは本のテーマについても同様です。共感を持って読むことができるテーマについては、読者も積極的に読もうとしてくれるのではないでしょうか。これが、本が課題解決の「ストーリー」を伝えられるということです。
多くの人にとっても重要な課題と、その解決のための活動や行動を伝えるためには、活動している人たちの想いも含めて、そこに存在する「ストーリー」を対話や本のような深いコミュニケーション方法で伝える必要があります。できれば一人一人と直接対話ができるとよいのですが、現実的には難しい。そういった場合に「本で伝える」ことが解決します。
相手が知りたい「実務的ノウハウ」を十分に伝えられる
2の、「伝えたい相手が知りたいと望んでいるハウツー・情報について、ユニークかつ十分な『知識の提供』をしたいとき」はもっとシンプルですね。
皆さんも実務上、興味関心を持っているテーマについて正しい答えやノウハウを教えてくれる場があれば、積極的に参加されるのではないかと思います。同様に、明確な答えやノウハウを本にまとめることによって、多くの人に手に取ってもらうことができます。
もちろん、どこでも聞けるような中途半端な答え・ノウハウでは意味がありません。セミナーの内容を書籍化される方もいらっしゃいますが、元のセミナー自体にオリジナリティがなく、答え・ノウハウとしての完成度が低い内容を書籍化しても(元々のお話の内容が変わるわけではありませんので)、読者にとってあまり意味があるとは言えません。
「新しいコンセプトやテクノロジー」を分かりやすく伝えられる
3の「『まったく新しい概念』を分かりやすく伝えたいとき」にも出版は有効です。新しい概念とは、例えば多くの読者がまだ理解できていないような新しい社会的コンセプトやテクノロジーなどです。
読者のそのテーマに対する理解度がまだ低く、Web上の新しい情報からだけでは、きちんと理解してもらえないような状況において、本が役立ちます。なぜ今、そのコンセプトやテクノロジーが重要なのかを伝え、背景としてどんな課題があるのかを理解してもらい、それを解決する方法として何があるのか、を順序立て伝えることで、しっかりと理解してもらうきっかけ作りができます。
一方で、新しすぎるテーマについては、想定読者が本をまず手に取ったり、開いたりしてくれないという懸念もあります。そうした新しすぎるテーマの場合は、短い動画を使ってビジュアルで分かりやすく説明し、問題とソリューションを明確に示すことなども必要となるでしょう。「フックは動画で作って、興味を持った人には本を使ってさらに体系立ててしっかり伝える」といったように、いくつかの施策を組み合わせる必要があるように思います。
本を使ったコミュニケーションは、どんなときでも有効な方法というわけではありませんが、「伝えるべき深い情報があり、伝えるべき相手がいる」とき、伝えたい人と受け取る人を強く結び付けます。
対面の直接対話は強い影響力を持ちます。同様に、しっかりと本を読んでもらえたとき、そこに書かれた言葉は、実際の対話以上に強いメッセージを与えられる場合があります。さらに、本はいつでも何度でも読み返すことができます。
今や多くの広報・PRがWebの世界で展開されるようになっていますが、この強力なコミュニケーション方法は、発信のタイミングさえ選べば十分に有効な施策となり得ます。
本を使った広報・PRが向かない場合とは?
一方で、本には「手に取って(買って)もらうまでのハードルが高い」「手にしても、読まずに放置されることがある」「読者の行動がトレースできない」といった弱点も持っています。したがって、使うべきではないケース、タイミングでこの方法を使うことは避けましょう。
「モノやサービスを購入してもらいたい」という目的が明確で、商品自体の説明に労力が必要ない場合、わざわざ本を通してコミュニケーションを取る必要はありません。「圧倒的に安い消費財を作ったので、大々的に販売したい」といったときなどです。例えば「格安のティッシュペーパーが作れた!」ということを伝えるためには、価格を広く告知するだけで十分なインパクトがあります。求められるのは、チラシやDM、広告といった手段になるでしょう。
一方で、「自然に優しく、作り手に優しく、利用者にも優しいティッシュペーパーを作る会社を創業し、仲間を集め、販売を広げていきたい」とします。こういった場合に、「なぜこの製品について知ってもらいたいのか」をストーリーとして語ることには大いに意味があります。私がこの会社の広報担当だったとしたら、このストーリーの露出先としては、まずスピード感のあるWebメディアから始めますが、強力なストーリーが描けるのであれば、同時に出版も検討します。
他に出版という方法が向かないのは「とにかくスピードが求められる施策(本づくりはどう頑張っても2~3ヵ月以上はかかります)」「ビジュアルで見せるべきテーマ(ファッションや映像など)」「実技を伴う教育(サブ教材としての本は十分意味がありますが)」などでしょうか。
そして、最も本づくりに向いていないのは「伝えるべき内容が薄い」ときです。
多少ニュース性が低くても、広告やプレスリリースを打てば、一時的に話題を盛り上げることはできます。セミナーも、キャラクターの立っているスピーカーの方であれば、少々内容が薄くても人気のイベントにすることができるかもしれません。しかしこれらを書籍化しようとすると、本にしたとたん一気にその内容の薄さが際立ってしまいます。
出版は魔法の技ではありませんし、本にしたからといって、そこから新たな価値が勝手に生まれるわけでもありません。しっかりと活動していること、価値あることを、しっかりと深く伝えたい。そういうテーマを伝えるのに本づくり・出版を活用していただくのがよいかと思います。
本は「作ったら売るもの」と考えない
実務的な話になりますが、広報・PRとしての本づくりを考える際には、必ずしも一般流通で書籍を販売することだけが「本の使い方」ではありません。
例えば、社内の人が読者となるのであれば、印刷したものを直接配布することもできます。顧客が読み手になるのであれば、郵送で配布するという方法を採ることもよくあります。
また、もともとつながりのない不特定多数の人々に伝えたいとしても、全国一律に頑張って流通させなくてよい場合も多々あります。専門的な内容になればなるほど読者層が限定されてきますから、広範囲での書籍流通の意味は弱くなります。
例えば、自社のWebサイト上で「特定の申し込みをしてくれた方に本をプレゼントするキャンペーン」を準備して、検索流入やWeb広告で知らせるといった方法も検討できます(詳細は割愛しますが、弊社の出版サービスでは一般の書店に書籍は並べず、複数のWeb書店で販売し、必要な人が探してくれたときに提供できる流通モデルに特化しています)。
このように、広報・PRを目的として本を作る場合、単純に「本づくり=一般販売するもの」と考えず、本には「配る、渡す」などいろいろな活用の仕方がある、ということを意識しておくとよいでしょう。
本づくりもあくまで「コンテンツ作りの一つ」として考える
「本づくり」と聞くと、これは一大事! としり込みしてしまう方もいらっしゃいます。本書でもここまで、「しっかりと強く伝えられるように」と強調して、本づくりのハードルを上げてしまったかもしれません。とはいえ、本づくりも「コンテンツ作りの一つの形態」にすぎません。「プレスリリースで伝えていること」「自社Webサイト上で伝えていること」「セミナーで伝えようとしていること」、これらがすべてコンテンツになり得るのと同様です。また、本は著述業を専門としているプロでないと作れない、というものでもありません。伝えたいことがあれば、ぜひ気負わず検討していただければ、と思います。
また、本には他チャネルのコンテンツを流用することもできます。例えば、Web上で発信した内容を整理し直して本を作ることもできますし、逆に本を作りながら、自社Web上で発信するネタを同時に確保していくこともできます。前述したようにセミナーの書籍化などもよく実施する方法です。
本づくりでは、伝えたい内容を考え、カタチにする「企画」が最も頭と時間を使うところだと思います。もし手持ちのコンテンツの流用ができるのであれば、積極的に活用することをお勧めします。
今回は、広報・PRとして本づくりを行う場合、どういう視点を持って取り組むとよいかを簡単にご説明しました。もし、ご自身や自社で取り組んでいる事業、活動を伝えるのに本(出版)が有効だと感じていただけるのであれば、ぜひ挑戦してみてください。
次回からは、本づくり(出版)の基本的な進め方や仕組みに関して、私が考える主要ポイントについてまとめてご紹介しています。必ずしも、すべてを著者ご自身で作業するわけではありませんが、まずは全体の大枠を本連載で知っていただければ、と思います。
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