社会は少しずつ変わり始めている! パパの育休、子育て世代のテレワーク 理想の働き方を選べるために

「パパ育休(男性育休)」と「子育て夫婦のテレワーク」をテーマにリアル「パパ・ママの悩み」をのぞいてみよう

(後編)

こんにちは。good.book編集部です。
今日は、「パパ育休」や「子育て夫婦のテレワーク」について出版された成川献太さんとikumado代表の千木良 直子さんにお話を伺った『「パパ育休」と「テレワーク」をテーマにリアル「パパ・ママの悩み」をのぞいてみよう』の後編をお送りします。

後編でも、パパ育休に対する世の中の価値観の変化や子育て夫婦のテレワーク事情について、経験者だからこそのリアルなお話を聞くことができました。

なぜパパは10日間の育休が取れないのか?—家族も、自分も、会社も、みんなが幸せになる育休の取り方・過ごし方・戻り方—著者:成川 献太

『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク—進化を止めるな!テレワークで見つけた「これからの私」—』著者:ikumado

パパ育休に対する世の中の価値観が変わり始めている

 

これまでパパ育休に関するパートナー間の問題や、パパならではの孤独感など、色々な悩みについてお話してきました。育休を取得する前後で生まれる様々な悩みに対して、社会は何も変わらないのかというと、そんなことはなく。
実は、少しずつ世の中の価値観が変わり始めています。そのひとつが、2021年6月に成立した「改正育児・介護休業法」です。育休に関して新たな試みが試行されることになりました。

 

<改正育児・介護休業法の主なポイント>
①育休の周知・意向確認の義務化(2022年4月~)
②出生時育休制度(男性版産休)新設(2022年10月頃~)
③大企業の取得率公表義務化(2023年4月~)
※詳しくはこちら

 

ー2022年の4月から真っ先に関係してくるのが、妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出に対して、企業側が個別に育休の周知・意向確認をしなくてはならなくなることです。これについて、どう思われますか?

ー千木良
男性ってこれまで「子どもが生まれます」と報告をしても、育休に関して一言も聞かれなかった人が大半だと思います。むしろ、「育休を……」なんて切り出したら「え?何?育休?」と聞き返されるくらいのレベル感だったと思うのですね。

どんな反応をされるかわからない上司に対して、こちらから恐る恐る切り出していた。それに比べれば、上司側から声に出して確認をしなくてはならない、というのは大きいはずです。


おそらく世の中の人は「育休を絶対取りたい!」「絶対取りたくない!」という考えの人よりも、「普通は取らないよね」という、世の中一般の真ん中をとるような考えをする人が多いと思います。その「普通」の基準、価値観が少しずつ変わっていくきっかけになるのではないでしょうか。

ー会社側から育休のきっかけを出してくれるのは、心理的なハードルが下がるような気がしますね。育休取得の時期を「子どもが生まれた直後に」もってくることもできるようになることについてはいかがでしょうか?

ー千木良
出産を終えて家に帰ってくる女性からみれば、出産直後に休みを取ってくれるというのはメリットに感じる人が多いと思います。
ジェンダーバイアスの意味でも大きいですよね。以前、同僚の男性に子どもが生まれたことをしばらくの間知らなかった、ということがあったのです。衝撃を受けてしまって・・。わたしは半年前から大きくなるお腹をさらしながら、産休育休のために頭を下げて回っていたのに、産休が必ずしも必要ではない(身体の変化がない)男性だとそういうこともあり得るのだなと。

ー成川
もちろん里帰り出産の場合は出産直後よりも、むしろ少し後に休んでほしいという人もいると思いますし、それぞれの事情にあわせてパパも育休がとれるようになるという意味で、②出生時育休制度(男性版産休)の新設は良いことだと思いますね。

ーここでも大事なのは「普通はこうあるべきだ」という考えに縛られずに、それぞれに合わせた育休のあり方で、「取りたいと思った人がきちんと取れるようになる」ことなのですね。


テレワークは子育て世代にとって非常にメリットがある働き方

 

ー最近は夫婦のどちらか、または両方ともがテレワーク勤務のケースが増えてきました。テレワークでも育休と同じような「パートナー問題」に関する悩みの声は多く見かけます。

 

「在宅勤務となり、平日の昼間いないはずの夫が家にいるようになった。まるで定年後の夫婦みたいに、朝から晩までずっと一緒なのでストレス。」
「夫の分も含めて昼食を作る日々。自分の分だけなら適当に済ますけど、そうもいかない。」

 

ー千木良
特に共働きの家庭の場合、これまでは夫婦2人とも外で済ませていた昼食を家で食べるようになるので、食事の用意を負担に感じる人は多いと耳にします。一緒に過ごす時間が増えればどうしたって価値観のぶつかることも、ストレスを感じることもありますよね。

ーコロナ禍が長引く状況の中、テレワークを導入する企業は増えてきています。一方で、子育て世代にとっては様々な悩みもあるようです。

「子どもも休園休校で家にいるので妻と交代で面倒を見る。仕事に集中できず全く進まない!」
「これまで仕事は仕事!家はママ業!とメリハリがあったけど、在宅勤務をしながら子どもの面倒をみるのは限界だ……」



ー千木良
リモートワークと子どもが家にいる問題は全くの別物です。子どもが家にいて面倒を見ながら、そうでない時と同じパフォーマンスをすることはまず難しいでしょう。
しかし、子どもの休園休校は緊急事態宣言中など一定期間の問題だと考えると、色々な問題はあるとはいえ、テレワークは子育て世代の人にとって非常にメリットがあると思います。

これまで通勤に費やしていた2時間程の時間がなくなる。時短勤務を選ばざるを得なかった人がフルタイム勤務にも挑戦しやすくなる。
熱を出した子どもを保育園に迎えに行くとか、小学校のPTA行事にほんの少しだけ行く、とかそういうことを自由に織り交ぜることができるのも大きな利点ですね。

ー千木良さんはikumadoの活動を通じて様々なパパママと普段からお話しされていらっしゃいますが、実際にそういったテレワークによる利点を感じているという声は聞かれますか。


ー千木良
「ごめんなさい、と言わなくてすむようになった」という声が印象的です。
100%会社にいるか、100%家にいるかしかなかったこれまでは、「早く帰ってごめんなさい」「お迎え遅くなってごめんなさい」とどこにいっても頭を下げていたんですね。
テレワークではごめんなさいと言わずに席を外すことができる。これは、精神的に大きいと思います。


テレワークがもたらす「会社だけではない生き方」という価値観

ー自分の生活スタイルや事情にあわせて、仕事とのバランスに融通しやすくなる。これはなにも、女性に限った利点ではないですよね。

ー千木良
男性でも今後、介護などを理由にたとえば実家に帰ったとしても、仕事を続けることができる。ライフスタイルの変化に合わせた、多様な働き方ができるようになりますよね。すごく人間的だと思います。


ー成川
もちろん職業によってはテレワークが難しいものもありますが、テレワークを取り入れることによる可能性は色々感じています。小学校でも個人面談をZoomで実施する学校なども出てきているんです。
ただ、どうしても現場では「実際に会った方がいいのではないか」という声があることも事実です。


ー千木良
大事だなと思うことは、「リアルの方がいいよね」を判断基準にしてはいけないということですね。リモートでできること、リモートの良さはリアルとは違うので。
コロナ禍が長引くことで世の中の価値観は確実に変わってきていると思います。テレワークの普及によって「会社に行かずに仕事をすることで生まれる時間」は、もちろん子育て世代の人にとっては家族と過ごす時間、子どもに向き合う時間にあてられるなど大きな利点です。
ですがそれだけではなく、子どもがいない人は自分の興味があることの勉強時間にするなど、「会社だけではない生き方」という価値観が多くの人に広がることに繋がっていったらいいなと思います。

 

ーパパ育休もテレワークも、世の中の変化にあわせて少しずつ広がってきた働き方・生き方・家族との向き合い方の選択肢ですよね。
「こうすれば正解!」という答えがあるわけではない。人それぞれの悩みがある。だからこそ、「自分自身や家族がどうしたいのか?」考えることが大切なのだと感じました。
お二人の本ではより深く「パパ育休」「子育て夫婦のテレワーク」について書かれています。ご興味をもっていただけましたら、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。

お二人とも今日はありがとうございました!




なぜパパは10日間の育休が取れないのか?—家族も、自分も、会社も、みんなが幸せになる育休の取り方・過ごし方・戻り方—著者:成川 献太

『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク—進化を止めるな!テレワークで見つけた「これからの私」—』著者:ikumado

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