育休パパが公園にいるのは変? 子育てに関する「普通」の壁
2021-11-12
「パパ育休(男性育休)」と「子育て夫婦のテレワーク」をテーマにリアル「パパ・ママの悩み」をのぞいてみよう
(前編)
こんにちは。good.book編集部です。
最近ニュースなどでも目にする機会が多いパパ育休(男性育休)。
長引くコロナ禍においてますます広がりをみせているテレワーク。
マスターピースでは今年、この2つのテーマに関する書籍を出版しました。
『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?—家族も、自分も、会社も、みんなが幸せになる育休の取り方・過ごし方・戻り方—』著者:成川 献太
『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク—進化を止めるな!テレワークで見つけた「これからの私」—』著者:ikumado
そこで今回は、著者の成川 献太さんとikumado代表の千木良 直子さんをお招きし、パパ育休とテレワークをテーマにお話を伺いました。
ご自身の育休取得時の体験談、子育て真っ盛りの家庭でのお話のほか、著者として様々なパパママのケースを見てこられた経験からのアドバイスもいただきました。まだまだ経験者の少ないパパの育休や、実践中の方も多いであろうテレワークに関するリアルなお話が満載!ぜひ読んでみてください。
パパ育休とパートナー問題
ー最近ニュースでも、パパ育休に関する話題を目にする機会が増えたように感じます。
確実に広がってきているパパ育休ですが、SNS上でこんな悩みを見かけました。
「育休で旦那が毎日家にいるのしんどい。ご飯作るのも食器洗いもお風呂入れるのも離乳食作ってあげるのも全部わたし。家事育児の配分がおかしい。旦那にやらせると手際が悪すぎて自分がやったほうが早くて頼むのもストレス。」
ーこれは少し極端な例かもしれませんが、いわゆるパートナーとの家事育児に関する悩みですよね。
ー成川
正直、育休を取った夫婦間であれば(特に2人とも育休状態のW育休の場合)どこの家庭でも起こりうるだろうなと。多かれ少なかれ、この問題に直面しないことのほうが少ないのではないでしょうか。その前提で、2人でどう解決していくのかを考える必要があると思います。
ー千木良
家事に関しては、できるできないよりも、やるかやらないかが問題だと思います。例えば、洗濯やごみ捨てなら多少時間がかかってもいい。本来、授乳以外の家事育児は男女関係なくやればできるはずなんですよね。それをやらない人がとても多いということ。
ーなるほど。確かに家事は男女関係なく、生活していくために必要なことのはずですよね。それなのに、気づいたらどちらかに負担が偏ってしまっている家庭は少なくないように思います。
では、育児に関してはどうでしょうか。
ー千木良
育児は、女性であっても第一子の時はわからないことだらけです。家事とは違って、みんなが初心者なんですよね。首もすわっていない、ミルクをきちんと飲んでいるかもわからない、そんな新生児をきちんと育てられるかどうかの心細さといったらありません。
もちろん自分の子どもは可愛いですが、育児の不安から沸き起こる気持ちはまた別物。その不安を、新生児期から隣で一緒に分かち合ってくれたら、とても心強く感じると思います。
第一子からパパが育休を取得していれば、ママと同じレベル感から育児と向き合えるかもしれませんね。
ー成川
私が育休を取得したのは第三子の時でしたし、周りのパパの中にも第一子の時には取得に踏み切れなかったという人が少なくありませんが、確かにそうかもしれません。
ー(やったことがないことに最初に取り組む時は誰だって不安だし、わからないことだらけ……。そんな時に同じように隣で悩みを共有できる人がいるのは心強い! )
価値観のぶつかりもあるけれど、違う視点からの気づきや発見もある
ー先ほど千木良さんが「家事はできるできないよりも、やるかやらないか」と仰いましたが、実際に内閣府が行った調査でも「家事・育児において妻ではなく夫の役割が増加した家庭では、女性(妻)も男性(夫)も生活満足度の低下幅が小さい傾向にある」という結果が出ています。
令和2年6月21日「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(内閣府)(https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/covid/pdf/shiryo2.pdf)を基に作成
ーパートナー間でのこうした問題をうまく解決するコツなどありますか。
ー成川
私の場合は、得意なことからはじめるようにしました。公園で子供と遊ぶ、お風呂に入れるといった力仕事系から分担していきましたね。
ー千木良
よく聞く話で、パパ側がやっているつもりでも、ママ側の基準に届かず文句をいわれるというパターンがありますが、これにはママ側の問題もあると思います。ママ側が自分のやり方が「普通」だと決めつけてしまっているとか。
ママ側が「これだけはどうしても嫌だ」と思うことは自分でやるしかないのですが、そういった「絶対にダメなこと」って案外ないのではないでしょうか。
意外と男性側が家事育児に関して問題提起をしてくれて、「これはやる必要なかったね!」となることってあるんですよ。価値観のズレにもぶつかるけれど、気づきもうまれる。
例えば私の場合は、当たり前のように洗ったバスタオルは畳んでしまっていたのですが、「畳まなくてもいいんじゃない?」と言われて、なるほどと。ちょっとしたひと手間ですが、毎日の家事育児の流れの中で大事な気づきですよね。
ー成川
第三者の目線を取り入れるって大切ですよね。
バスタオルの話とかぶりますが、私は「お風呂上りに使うタオルは、小さめの普通サイズのタオルでもいいんじゃない?」と提案したことがあります。妻からは「言ってくれて確かにと納得した」と言われました。家族全員分のバスタオルを洗濯するのはかなりの手間ですからね。
他にも、息子がハサミを上手に使えなくて悩んでいた妻に、「今すぐ上手に使えなくてもいいんじゃない?」と声をかけたこともあります。今すぐ困ることはないし、いつかは使えるようになるからと少し肩の力が抜けたと妻は言っていました。
ー悩んでいたことが、違う角度からの気づきで改善された素敵なエピソードですね
ー千木良
何よりも、「当事者として一緒にチームを組んでいる」という感じがしますよね。
これが恐らく普段は家事育児を全くしない人で、たまたまその日だけ口を出したとなると、受け取り方は変わってくると思うのですが……。
普段からこうやって2人で、互いに気づきを与えあいながら家事育児と向き合うことで、「2人でやったら上手くいく、楽しい」と感じている夫婦もいると思います。Twitterなどにはそうしたポジティブな意見はなかなか見られないと思いますが……(笑)。
ー成川
洗濯機では洗えない洋服を気づかず回してしまったり、沢山失敗もしてきました(笑)。いつかおじいちゃん、おばあちゃんになった時に2人であの時あんなことあったねと、笑って話せたらいいなと思っていますね。
目に見えない子育ての「普通はこうだ」
ーSNSで見かけたこんな悩みの声もありました。
「子育て支援センターや公園はママばかり。社会から孤立している気分。周りに気軽に悩みを話せる人もいない。」
ー成川
きっとこの気持ちはママさんたちはずっと感じてきたことで、育休を取ったからこそパパさんたちも感じるようになってきた、ということですよね。
ー千木良
確かに、「ママの辛さがよくわかった」となることが多いので育休を取ってもらってよかったと思う人は多いですね。一方で、男性のほうがより一層孤独を感じやすい傾向にあるのかもしれません。ママはママ友が作りやすいけど、パパは……みたいな。
ー確かに子連れのパパ友が集まってる様子はあまりイメージがわかないかもしれません。パパが繋がりを作りにくい理由は何かあるのでしょうか。
ー千木良
そもそも母数が少ないというのもあります。でも、「男性同士で飲みに行く」ならできるのに、「子連れで公園に行く」となるとハードルが高く感じてしまう。
子育てに関して「普通こうだよね」という固定観念みたいなものがあるのだと思います。「パパが公園にいたら変だよね」というような……
ー成川
実際わたしは1年間の育休中、子どもの送り迎えを毎日していたのですが、周りから「変だな」と思われていたと最近知りました。「時差出勤かな?」「夜勤明けなのかな?」と不思議がられていたらしいです。
平日の昼間にパパが街にいることが、まだまだ「変わってる」ことなんだと実感しました。
ー男性女性に限らず、これまでずっと平日の昼間は会社にいた人にとっては、完全アウェイな環境なのですよね。そこにどうしても「普通はこうだ」というバイアスがあるのだと感じます。
お話を伺ってみて
まだまだ経験者が少ないパパ育休の取得には、確かに課題も多いけれど、夫婦それぞれの視点から見た気づきもあって面白そうです。
お話を伺っていて印象に残ったことは、失敗も価値観のぶつかり合いも含めて、「同じ時間を共有する」ことに意味があるということ。相手任せになることなく「当事者として一緒にチームを組んだ」経験がもたらすものを、様々なパパ育休経験者の方に聞いてみたい気持ちになりました。
育休は取得して終わりではありません。育休中にも悩みはつきものです。さらにこのご時世、復職したら夫婦揃ってテレワークに……というケースもあり得るのではないでしょうか。「家事育児にくわえて仕事も家の中で?どうなんだろう?やっぱり難しい?」と気になりますよね。
後編では2021年6月に成立した「改正育児・介護休業法」など新たな試みや、悩みを抱えていらっしゃる方も多いであろう「子育て夫婦のテレワーク」についてお話しします。
成川さん、千木良さんが書かれた本については下記リンクから。
背景や家族構成が様々なリアルパパママの物語や、自分と向き合うワークシートがついており、より深く「パパ育休」「子育て夫婦のテレワーク」について書かれています。ご興味をもっていただけましたら、ぜひ手に取っていただけたら嬉しいです。
『なぜパパは10日間の育休が取れないのか?—家族も、自分も、会社も、みんなが幸せになる育休の取り方・過ごし方・戻り方—』著者:成川 献太
『やってみてわかった子育て夫婦のテレワーク—進化を止めるな!テレワークで見つけた「これからの私」—』著者:ikumado