その出版企画を一番ユニークに見せられる切り口を探す方法【出版社をやってみて分かった「本と企画のつくり方」】

【第2回】この連載では、これまで100冊ほどの書籍企画・編集・発行をお手伝いさせていただいた筆者(株式会社masterpeace代表兼編集者をやっております)が、自社でお手伝いさせていただいた企画やプロジェクトの経験からお伝えできる範囲で「シンプルな本づくりのポイント」をお話させていただきます。

good.book(グーテンブック)という出版サービスを運営している窪田と申します。

この連載では、もともと編集者でもなかった私が、様々な著者さん・編集者さんとご一緒するなかでわかった範囲で、「本や企画作りのポイント」について簡単にお話させていただきます。(生粋の書籍編集プロの皆様からはお叱りのお言葉をいただく内容もあるかもしれません。門外漢ゆえの、、としてご了承ください。)

弊社の出版サービスは、主に電子・印刷書籍を複数のWeb書店を通じて販売するというものです。大手出版社さんの「全国の書店に書籍を並べて販売する」出版方法とは主に流通面で異なる点は多いのですが、企画の作り方や書籍制作の進め方についてはそこまで大きな違いはないかと思います。

「これから本を作りたい著者さん」あるいは「書籍化したら面白そうなネタがある企画者さん」のご参考となれば幸いです。

尚、弊社の発行企画の傾向から、特に「書くことが好きでただ書きたい!」方よりは、「書籍を作って、人に伝えることでお仕事や様々な目的でなんらかの効果を生み出したい」と考える人のための本づくりを中心にお話させていただきます。


前回の記事では、「本づくりを成功させるための3つのポイント」のひとつとして、「何のために本を作るのか(プロジェクトの目的)」を正確に(自分に正直に!)確認することが大切だ、とお伝えしました。

「何をもって成功なのか?」を先に決めてから始めないと、意外と大変な本づくりとその後の販売の過程のなかで、大切にすべきことが分からなくなってしまいがちだからです。

今回の記事では、「本づくりの3つのポイント」の残り、「企画(著者)が一番ユニークになれる切り口を探す」について書きたいと思います。

弊社で書籍企画のご相談をいただいたときや、自社出版企画を考えるときは、今回ご紹介する2つのポイントのバランスがどうやったら取れるか、を何度も考えるようにしています。

2つのポイントの片方がずば抜けていてもうまくいかないことが多いので、「できるだけ高い位置でバランスが取れている企画」にできるとよいな、、と思っています。


本づくりのポイント2「企画(著者)が一番ユニークになれる切り口を探す」

①「その企画(著者さんの話すコト・書きたいコト)の何がおもしろいの?」

②「似たテーマのコンテンツって他にもあるの?」

企画を考えるときには、まずこういったQuestionを頭の中で問いかけています。

まず、その企画自体に興味が持てるかどうか。

やはり最初はこのシンプルな問いかけから始めます。


この企画の何がおもしろいのか?を、想定読者を含めてイメージする

「こういう本が出来たら売れそう、、」など、いろいろ考えたくなってしまうのですが、まず「おもしろそうかどうか」は本づくりを始めるうえで大切です。

おもしろくない企画(あるいはおもしろさが人に伝えられない企画)では、本づくりのモチベーションを維持することも難しくなってしまいますしね。

編集者さんなら第三者として、客観的に考えることもできるかもしれませんが、とくに著者さんの場合は自身の企画について、ついつい主観的におもしろく感じすぎてしまう場合が多くなりがちです。

その場合は、考えている書籍ができたと仮定して、想定している読者(できたら著者が知っている実際の人物を想定)に対面で書籍をオススメするときにどう説明するかをイメージしてみてください。

オススメのポイントが明確で、イメージのなかで相手も「そりゃいいや!買うわ!」となりましたでしょうか?

イメージの中で相手が「うーん。。」と言ってしまったら、おそらく作っている途中に著者さん自身が迷うことも多くなるかと思いますし、もちろん完成した書籍が想定読者に受け入れられることも難しくなります。

(もちろん「誰もがおもしろがる」必要はありません。読んでほしい「想定読者」がおもしろがってくれればよいのです。)

作り手側に立つと多くの企画が「めちゃめちゃおもしろく」感じられるようになりますが、実際に読んでほしい人におもしろさが伝わり、受け入れられる本は必ずしも多くありませんので、ここのおもしろさの評価は少し厳しめに考えたほうがよいと思います。


企画は目に見えるように書き出して見直しましょう

昔から言われることですが、企画を寝かして、後日客観的に見直すことも効果的です。

そのために、後から見直せるように企画を「目に見える文章」に書き出すことが必要です。

頭の中にしかない企画はわりと穴だらけで、具体的な内容が実は詰まっていないことが多いので、「企画は書きだす」ことをぜひオススメします。

書き出し方は、紙でもデジタルデータでも、きれいな企画書やスライドにまとまっていなくてもよく、箇条書きのテキストでも十分だと思います。


企画のライバルがだれかを考えてみる

うん!この企画、やっぱりおもしろいわ!ということであれば、2つめのQuestion「似たテーマのコンテンツって他にもあるの?」を調べてみましょう。

「コンテンツ」には、書籍・雑誌・Web記事・動画、、などさまざまな形式が含まれます。お手軽に、GoogleやAmazon上の検索を使って、企画の切り口となるキーワード(複数想定されると思います)を検索してみましょう。

もちろん、同様の企画がすでに世の中にあるからといってダメというわけではありません。

たとえば、

「Webコンテンツとしては多くみられるが、体系立てられた書籍がまだ出ていないテーマで出版する」

といった企画は十分に成立するでしょう。

情報が広がるスピードとしては、「Webメディア」⇒「雑誌社」⇒「出版」という傾向にあるので、まだ「出版」までトレンドの波が来ていない半歩進んだ企画を拾い上げてカタチにすることは実現可能です。

Webメディアの前には「コミュニティ(小規模イベントやサロン、勉強会)」があるようにも感じますが、ここまで進んだテーマを書籍化しても、広がらない(広げる必要がなくて、コミュニティで深く掘りこんだ情報をやり取りするのが向いている)可能性が高いかも、と私は思います。


実績・類書ばかりから企画を考えているとレッドオーシャンから抜け出せない

ただし、

「すでに書籍として同様の企画が山ほど出版されているが、あえて出す」。

こういった企画はなかなかハードな勝負を挑むことになります。

もちろん、類書(同じテーマの本)が出ているということはある程度読者層が存在する「固い企画」とも言えるのですが、本づくりとしてはいわゆるレッドオーシャンで勝負することになるので、その競争に勝てる根拠が必要となります。

逆にいうと、一定の読者が想定できるのに類書が出版されていない企画は、宝の原石です。半歩先に進んだ、かつおもしろいテーマということになりますが、こういった企画をいち早く書籍化することには可能性があり、また本づくりをお手伝いする者としてもチャレンジする意義の大きな企画といえます。

読みが外れて、まったく売れない企画となることもあるとは思いますが、より多くの読者を誘導する可能性がある企画だと思います。


100匹目のどじょうは、選ばれる理由を作りづらい

類書がすでにある場合の選択肢としては下記などが考えられます。

「類書はあるが、あふれかえるほど出ているわけではない。」

ライバルがそこまで多くないのであれば、そのまま出しちゃう、、もアリです。

オンリーワンの企画とはなりませんが、2匹目・3匹目のどじょうを狙うということですね。

企画がかぶっていても、結局書く人・編集者の手によってそれぞれの書籍は異なるものに仕上がりますので、弊社でもこの選択肢を取っていることは多数あります(読者によって書籍の探し方も違いますし、多少の類書がすべての読者をカバーできているわけではありません)。

ただし、100匹目のどじょうを狙うとなると少々難しく、その本を読者が選ぶ理由がないとなかなか販売面でも難しいかと思います。

もちろん、「これまでの類書にはない超ハイクォリティな企画で、中身が全然違うのだ!」と主張できる場合もあるかと思いますが、本を探している読者は、そこまで細かく中身まで吟味することはできません。

「圧倒的な販売力を持っている出版社やメジャー流通企業から販売することで、販売物量で勝つ」。

弊社では難しいですが、こういった方法もあるかもしれません。(なぜその出版社さんがその企画を選択するのか、、の理由は必要ですが)


類書のあるテーマで書籍化したい場合の「テーマの掛け算」

企画には想定読者が一定数想定される。

ただし、類書はある。

こういった場合に弊社が取ることが多い方法は「テーマの掛け算」です。

考えているメインテーマだけでは他の類書との差別化ができないところに、「サブテーマ」を掛け合わせることで、他にはない企画とすることができます。

たとえば、「会計の入門書」というテーマで本づくりを考えているとします。

山ほどの類書がすでに販売されていますが、売れているものも売れていないものもあります。

今から「会計の入門書」を作ろうとすると、なんらかの理由がないと読者に選んでもらうことはできません。

ここにもう一つの切り口(サブテーマ)を掛け合わせてみましょう。

売れるかどうかは確約できませんが、ちょっとユニークなものに感じられてはこないでしょうか。


テーマの掛け算「会計の入門書」×「特定業界」

たとえば「保険営業マンのための会計入門」。

たとえば「起業して3年以内で使う会計入門」。

たとえば「運輸業界で働く担当者のための会計入門」。

会計の入門書というメインテーマはそのままに、読者の属性を絞り込むサブテーマを掛け合わせることで、サブテーマに該当する読者にとって「より自分に最適なテーマ設定の書籍」として感じてもらいやすくなります。


テーマの掛け算「会計の入門書」×「著者自身」

たとえば「税務調査を20年担当した調査官による、いざというとき慌てない会計入門」。

たとえば「<有名人名>が怪我して覚えた、これだけは知っておきたい会計入門」。

著者自身に強い訴求力がある場合は、こういった企画の絞り方も可能です。

企画検討の切り口としては「著者さんの独自性って何?(なぜ、他の誰かではなく、この著者さんが話す意味って何?)」を考えることになります。

とはいえ、そこまで訴求力がある著者さんは少ないため、このパターンの企画はなかなか難しいように思います。上の2つ目の例の場合は、どちらかといえば有名人本がメインテーマですしね。


テーマの掛け算「会計の入門書」×「時間軸」

時間軸を企画の特長として掛け算することもできます。

たとえば「2019年法制に完全対応した会計入門」などがこれにあたります。

もっともわかりやすい例は、資格の検定試験の予想問題集でしょう。

同じ検定に対して、複数の出版社さんから同じような問題集が発売されていますが、やはり「2020年試験最速対応」といった、書籍内容の「鮮度」は、この種の本選びにおいては重要なポイントとなっています。

同様に、ITツールのマニュアル本なども「いかに最新の情報を取り込んでいるか」がポイントとなることもあります。

(もちろん、新しければよいというものではなく、内容が一定以上のレベルにあることは前提となりますが)


掛け算しすぎると読者がいなくなる

ユニークを求めすぎて、あまりに掛け算しすぎると想定読者が狭くなりすぎますので注意しましょう。

たとえば、「NPOで、海外取引をやりたい人のための、会計処理入門」といった企画を考えたとします。

ここでは「会計入門」×「NPO」×「海外取引」と3つが掛けられていますが、この企画がドンピシャにはまる読者はあまりに少ないだろう、と想像できます。

掛け算ですので、どれか一つでもニッチすぎるテーマ設定が入っていると、全体が一気に縮小することに要注意です。


「おもしろいメインテーマ」を選択し、「独自性のある切り口」を掛け算する

今回の記事では、

①想定読者にとっておもしろいと思ってもらえるメインテーマをまずは吟味する

②著者さん自身が持っている引き出しから、企画に独自性を与える切り口はなにかを考える

の2段階で企画を考えることをご紹介させていただきました。

せっかく作る本はしっかり読んでもらいたいもの。まずは、自身が考えている企画の想定読者に手に取ってもらえるように、「その本が選ばれる理由」を考えることが重要だと私は思います。

さまざまな企画のつくり方があるとは思いますので、「本づくりをやってみたい方」にとって、方法の一つとして参考としていただけたら幸いです。

次回の記事では、「本づくりの3つのポイント」の最後「読み手のニーズ(欲求)を考える」についてお伝えしたいと思います。


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